昔からよく「寝る子は育つ」と言われています。実は、脳科学の観点から見ても、これは真実です。人間の頭には「古い脳」と「新しい脳」があるのですが、特に「古い脳」の働きをよくするには睡眠が大切です。0歳から始める年齢別脳の育て方も解説します。
「古い脳」の働きをよくするには睡眠が大切
脳の構造の中で、脳幹(命を司る脳)と大脳辺縁系(本能を司る脳)は、 太古から動物に備わっている、いわば「古い脳」であり、 大脳皮質と小脳は、動物が人間に進化する過程で発達した「新しい脳」ですと、説明しました。( 詳しくはここをクリックしてご覧ください。)
人間が生まれてから成長していくときも、「古い脳」から発達していき、それに続いて「新しい脳」が発達すると考えてよいでしょう。命を守るために、空腹を感じてミルクを飲む、離乳食を食べる。そして、首がすわる、寝返りをうつ、立ち上がるなどの成長をしていきます。
夜になると眠くなる、体温を調整するなども、「古い脳」の働きによるものです。それゆえ、知能を高める前提として、まず「古い脳」の働きによる成長を促して、健康な発育をするようにしてあげることが大切です。
そのために、最も重要なことは、「睡眠」です。生まれたばかりの赤ちゃんは16時間30分くらいの睡眠が必要と言われています。「古い脳」は5歳くらいまでに完成しますから、それまでに、早寝早起きの習慣を付けさせなければなりません。
ちなみに、5歳になると11時間、9歳になると9時間の睡眠が必要と言われています。知能を高めるためには、健康な身体づくりを最初にやる必要があります。早寝早起き、毎日決まった時間に朝ご飯を食べさせるなどが、とても大事なのです。
「新しい脳」が活発に働き始めるのは、概ね6歳くらいからです。したがって、満6歳を過ぎてから小学校に入学して本格的な勉強を始めるというのは、脳科学から見ても理にかなっているのです。
0歳から始める知能を高める年齢別脳の育て方
6歳までは、「古い脳」を中心に、健全な生活リズムや健康な身体づくりをすることが基本なのですが、もちろん生後すぐから知能を高める子育てをしていき、「新しい脳」の育成に備えることも必要です。
学問的な知識を学ぶのは6歳からでも、それを受け入れる脳は、それまでに育成しておかなければなりません。人間の脳は3歳までにほぼ出来上がるので、知能を高めるためには、生後すぐ、いやお腹の中にいる頃から3歳までの子育てに注力することが極めて重要なのです。
0カ月~3カ月の脳の育て方
お腹の中にいる頃から、赤ちゃんはお母さんの声を聞いているといわれています。お腹の中にいるときからはじめて、誕生直後の0カ月から3カ月の赤ちゃんにも、たくさん話しかけてあげましょう。
この頃の赤ちゃんはまだ寝ていて、おっぱいの飲むことと、おしっこをするだけですから、それに対する声かけをしてあげるようにすればよいのです。例えば、次のような言葉をかけてあげます。
「お腹がすいたでしょう、おっぱいを飲もうね。」、「おっぱいおいしかったね。お腹がいっぱになったね。」
「おしっこがいっぱいでたね。」、「おしりがぬれちゃったね。」、「おむつ替えようね。」「気持ちよくなったでしょう。」
もちろん、言葉はこの通りでなくても構わないので、赤ちゃんの立場にたって、赤ちゃんの気持ちを表現してあげるようにしましょう。
4カ月~6カ月の脳の育て方
4~5カ月になると、「アー」とか「ウー」などという声を発するようになります。せっかく声を発するようになったので、両親はその声をまねて返してあげるなどして、コミュニケーションを取るようにします。次のような言葉をかけてあげます。
「いま『アー』って言ったね。楽しいんだね。」、「『アー』ママも楽しいよ」
「たかいたかい、面白いね。もう一回やろうね。」、「〇〇ちゃんの大好きなおかゆ美味しいね」
この頃にできる「たかいたかい」などの遊びを取り入れたり、5カ月頃からは離乳食を食べ始めるので、それに合わせた会話をするとよいでしょう。
7~11か月の脳の育て方
7~11か月になると、手先も少し器用になるし、ハイハイを始めるようになります。言葉はまだ話せない子が多いですが、両親が話したことはしっかりと理解できるようになります。
「ボール渡すね。受け取ってね。」、「今度はそのボールをお母さんに渡してね。上手にできたね。」
「ハイハイしてついてきたの。少しここで待っててね。」「お待たせしました。おりこうさんね。」
何でもよいので、自分や赤ちゃんが行動する度に、できるだけ話かけてあげるようにしましょう。そして、小さなことでも、赤ちゃんが何かできたときは、思いっきりほめてあげましょう。まだ話せなくても、会話をすることが大切です。
1歳の脳の育て方
1歳になると、個人差はありますが、立って歩けるようになります。また、まだ言葉の数は少ないのですが、話すようになります。1歳から2歳の間は、成長が著しく、どんどん話せるようになり、動作も大人のまねをしたがるようになります。
「〇〇ちゃん、歩くの上手だね。ここまできてごらん。」「〇〇ちゃん、ボールけるの上手だね。」
「(子供が『わんわん』と言ったら)わんわんいたね。可愛いね。」、「(『まんま』と言ったら、まんま美味しいね。たくさん食べようね。」
歩く、けるなどの動作ができたら、ほめてあげます。言葉をしゃべるようになるので、たくさん会話をしましょう。その際に、子供が離す言葉を、そのまま繰り返してから、次の会話に続けるようにします。
2歳の脳の育て方
2歳になると、絵本が大好きになります。個人差はありますが、おむつをはずして、自分でトイレにも行けるようになります。外にでかけると、何にでも興味を示して、動き回るようになります。
「(絵本を見ながら)くまさん大きいね。今度動物園に行ってみようね。」「赤い花きれいだね。今度、お花屋さんに行ってみようね。」
「ハンカチ上手にたためたね。自分でたたむと楽しいね。」、「お片付けできたね。きれいになると気持ちがよいね。」
絵本は言葉の宝庫です。絵本で覚えたら、次は本物を見せに連れていって、言葉と実物が結びつくようにしましょう。お母さんと同じことをしたがるので、簡単なお手伝いをさせて、できたらほめてあげましょう。
3歳の脳の育て方
3歳になると、幼稚園の3歳児クラスに通う頃になります。この頃から、少しずつ相手を思いやる気持ちが芽生えるようになってきます。自分のプライドを守るために、ウソを覚えるのもこの頃からです。
「△△君は痛かったよね。ものを投げてぶつけたらだめだよ。」、「ブランコは皆で遊ぶものだよ。△△ちゃんに替わってあげようね。」
「〇〇ちゃんは、おばあちゃんの家にどうして行きたいの?」、「〇〇ちゃんの描いた絵をあげたら喜ぶかな?」
3歳代になると1000語くらいは話せるようになるので、かなりの会話ができるようになります。両親はできる限り、子供と会話をするようにしましょう。その中でも、特に、相手を思いやったり、相手の気持ちを考えたりする気持ちを、育てるようにするとよいでしょう。
脳研究の中で、人間の脳は3歳までにほぼ出来上がることがわかっています。したがって、知能を高めるためには、お腹の中にいるときから、3歳までの間の子育てが極めて重要なのです。
知能を高めるということは、脳の中のシナプスを増やして、ニューロンを結びつけることです。そのために何が必要かというと、五感に対する刺激です。したがって、両親は子供の年齢に応じたやり方で、五感に対する刺激を与えなければなりません。(詳しくはここをクリックしてご覧ください。)
最初は一方的に話かけたり、手をにぎってあげたりすることから始めて、成長と共に子供に合わせた会話をしたり、絵本を読んであげたり、一緒に遊んだり、一緒に家事をしたりして、常にコミュニケーションを取り続けることが脳を育て、知能を高めることになるのです。
世俗的な話で恐縮ですが、自分の周りで、東大など高学歴な子供を持つご両親にお話しを伺うと、子供が物心つくころから、できるだけ多くの本を読んであげたということと、子供の質問に対しては何度でもていねいに答えてあげたということが、ほぼすべてに共通しています。
まとめ
脳科学で脳の構造を調べると、人間の脳には、「古い脳」と「新しい脳」があることがわかります。そのうち、「古い脳」の働きをよくするためには、睡眠が極めて重要なことが判明しています。まさに「寝る子は育つ」です。
6歳までは、「古い脳」を中心に、健全な生活リズムや健康な身体づくりをすることが基本です。それと同時に、もちろん生後すぐから知能を高める子育てをしていき、「新しい脳」の育成に備えることも必要です。
子供の脳を育てて、知能を高めるためには、子供の年齢に応じた育て方を知り、実行することが大切です。そこで、今回の記事では、0歳から3歳までの脳の育て方について、具体的にご説明しました。ぜひ、ママとパパに実行していただければと思います。
-
知能とは何か?知能とIQ(知能指数)の面白い関係!脳科学から見た早期教育の必要性
幼児教育の最大の目的は知能を高めることだとすると、知能について理解する必要があります。知能はIQ(知能指数)として計れるのでしょうか?また、知能を知るためには、脳の構造を学ぶ必要があります。知能や脳と ...
続きを見る