幼児教育で大切なことは何でしょうか?運動、遊びの重要性を再認識しましょう。モンテッソーリなど、海外と国内の有名な幼児教育メソッドの個々の特徴と共通点について解説します。あなたのお子様の教育に役立ててください。
幼児教育で大切なこと!運動、遊びの重要性!
幼児教育で大切なことを5項目に絞ってご説明します。
子供の才能や能力を信じること
子供はすべて才能を持って生まれてきます。あなたのお子様も必ず才能を持っています。「やればできます」。親として、子供の才能を信じてあげてください。幼児の頃は、成長の個人差がありますので、早くできる子供と、できるまでに時間を要する子供がいます。
それでも、努力を続ければ、必ずできるようになります。表面的に他の子供と比べてみてもたいして意味はないので、他人と比べて一喜一憂するのは止めましょう。幼児教育で最も大切なことは、自分の子供の才能や能力を信じてあげることです。
子供の個性を尊重してあげること
子供の才能や能力を信じることと同時に、子供の個性を尊重してあげてください。あなたのお子様は、他の子供と違ってよいのです。人それぞれに、得意なことと、苦手なことがあるのは当たり前です。
苦手なことも時間をかければできるようになりますが、苦手なことを気にするより、子供の得意なことに目を向けてあげてください。幼児教育の基本は「愛情を持ってほめる」ことです。
子供自身が競争心を持っていますから、苦手なことを克服したいと本気で思えば、自らがんばって克服します。幼児教育で大切なことは、子供が自信を失わないようにサポートすることです。そのためには、得意なことをほめることです。
教えるのではなく才能を引き出すこと
幼児教育というと、「教える」すなわち「知識を詰め込む」というイメージを持たれているのではないでしょうか?もちろん、手ほどきのために「基本的な知識を教える」ことは必要です。しかし、それは 「知識を詰め込む」 こととは違います。
あくまでも、「子供が自主的に考えて、主体的に行動する」ための手助けをすることです。大事なことは、子供の「創造力を育む」ことです。そのためには、机上で知識を詰め込むのではなく、できるだけ多くの体験をさせることが必要です。
例えば、プログラミングでは、用語やルールを知識として覚えることは必要ですが、本当に重要なことは、その知識を使って、試行錯誤することです。失敗体験を積み重ねることにより、子供の持っている構想力や創造力を育むことができるのです。
運動、遊びの重要性を認識すること
幼児教育では、運動と遊びは極めて重要です。健康な身体と高い知能は表裏一体の関係であり、どちらも非常に重要だからです。幼児教育においては、運動や遊びと勉強を区別する必要はまったくありません。
例えば、英語学習では、英語の歌を唄いながら踊ったりするのは、幼児から見れば遊びであり、親から見れば勉強なのです。幼児教育においては、「遊び感覚で学ぶ」ことが重要です。「楽しく」なければ、長続きしないからです。
また、運動や遊びは一人でやるときもあれば、集団で行うときもあります。集団で運動したり、遊んだりというのは、とても重要です。運動や遊びを通して、ルールを学び、社会の一員であることを自覚するからです。
親の役割は教育環境を整えてあげること
幼児教育において、親は主役ではありません。子供が主役なのです。このことを心に刻んでおいてください。親の役割は、「子供の才能を引き出す」こと、 「子供が自主的に考えて、主体的に行動する」 のを手伝うことです。
言い換えれば、親の役割は、子供の教育環境を整えてあげることです。子供が遊べるスペースを作ること、知育玩具など子供が遊びながら学べる道具を揃えてあげること、子供に絵本を読んであげること、子供に適した保育所や幼稚園を探してあげること、子供が関心を持ちそうな習い事の教室を探してあげること、などです。
時々は、旅行などで、子供が自然の中で思い切り運動したり、遊んだりできる場所に連れて行ってあげてください。
モンテッソーリなど幼児教育メソッドの共通点
モンテッソーリなど有名な幼児教育メソッド個々の説明、及び共通点についてご説明します。
幼児教育メソッド個々の説明
まず、幼児教育メソッド個々の説明からしていきたいと思います。
モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育は、女性としてイタリア初の医学博士号を取得した医師であり、教育家でもあったマリア・モンテッソーリ (1870年- 1952年)が開発した教育メソッドです。子供の「自己教育力」を前提とする点が特徴です。
「自己教育力」とは、「自分で自分を育てて成長する力」のことを意味します。子供には「自己教育力」が備わっているので、大人には子供に対して自分の価値観や知識を教え込もうとせず、子供自身が自らの活動によって成長するのをサポートする役割を果たすことを求めます。
モンテッソーリーは子供を科学的に観察することにより、前期(3歳まで)と後期(3歳~6歳)に分けて、それぞれの発達段階に合わせた環境整備や教具の開発をするなどして独自のメソッドを確立していきました。現在では、世界110ヵ国以上に普及しており、世界で最も有名な教育メソッドとして知られています。
シュタイナー教育
シュタイナー教育は、ドイツを中心に活動した哲学者であるルドルフ・シュタイナー(1861年-1925年)が提唱した教育メソッドです。健康な身体を育て、感情や意志に働きかける総合芸術としての教育を施す点が特徴です。
すべての子供に共通する心身の発達プロセスを整え、そのプロセスの中に個性を調和的に導入することで自由を得られると考えました。0歳から21歳までを7年ずつ3つの成長過程に分類し、発達段階に合わせた教育を行います。幼児期は、手足を動かして遊ばせることで身体を発育させることを重視します。
大人は言葉で教えるなど知的な経路を通じた教育をするのではなく、大人の真似をさせることで、子供にさまざまな体験をさせます。それらの体験を通して、意思や創造力を育んでいきます。子供の個性を尊重して、その個性を社会と調和させるように導いていきます。
レッジョ・エミリア・アプローチ
レッジョ・エミリア・アプローチは、イタリアのレッジョ・エミリア市で発祥した教育メソッドです。教育学者ローリス・マラグッツィ (1920年-1994年)が基礎を築いたと言われています。正確に表現するとメソッドというよりも「アプローチ」という点が特徴です。
「アプローチ」とは、具体的な教具や教員資格が定められておらず、子供にアプローチする心構えが哲学として定められているのみという意味です。それゆえ、子供の興味や関心によってカリキュラムの内容は自由に変化し、子供の個性や意思を尊重して、子供が主体的に学ぶことを重視しています。
子供は個性を持ちながらも集団の中で学んでいくと考え、プロジェクト活動における話し合いを重視します。大人は知識を与えたり指示をするのではなく、ドキュメンテーションと呼ばれる記録を取るなど、子供が体験を通して自ら学んでいくためのサポートに徹します。
ピラミッドメソッド
ピラミッドメソッドは、オランダ政府教育評価機構Cito(旧オランダ王立教育機構)が提唱した教育メソッドです。Citoに勤務していた教育心理学博士のフォン・カルクなどを中心に開発されました。ピラミッド構造の教育理論が特徴です。
ピラミッド構造の教育理論とは、「子供の自主性」「保育者の自主性」「寄り添うこと」「距離を置くこと」の4つの教育概念が、ピラミッド (四角錐) の土台のように、教育の土台となるという意味です。
子供は自主的に活動する中で、決断力や問題解決能力などを身に付けていきます。保育者は自主性を持ち、一人一人の子供に寄り添ったり、時には距離を置いたりして、子供の活動をサポートします。子供が安心して、自主的に活動できる環境を整備することが、大人の役割です。
ニキーチン教育
ニキーチン教育は、ロシアのモスクワ郊外に住むニキーチン夫妻が、7人の子供たちを育てる中で、その経験をもとに考案した教育メソッドです。「子供の創造力を育む」ことを重視している点が特徴です。
「子供の創造力を育む」ために、「比較力」「分析力」「洞察力」「判断力」「実行力」の5つの能力を身に付けさせます。これらの力を駆使して、「自分で考える」「自分で解決方法を見つける」ことができるように育てていきます。
ニキーチン教育でよく知られているのは、積み木などの知育玩具を使った遊びです。子供たちは遊びを通して、7歳までに様々な経験を積み重ねていき、5つの力を身に付けて、「創造力を育む」ようになります。
フレーベル教育
フレーベル教育は、ドイツの教育者であるフリードリヒ・フレーベル(1782年-1852年)が実践した教育メソッドです。フレーベルは幼稚園の創始者として知られています。人間の中に宿る神性を伸ばす点が特徴です。
幼児の中にも神性があり、幼児期にその神性を伸ばすことが、人間の未来の生活の源泉となると考えました。そして、幼児の神性を伸ばして発達させるためには、遊びが重要であり、大人は幼児期の遊びの重要性を認識して、遊びを通して教育を行うように主張しました。
幼児は自然の中で草花に囲まれて遊び、手足を動かしたり歌を唄ってリズム感を養い、恩物(おんぶつ)と呼ばれる積み木遊びをします。遊びを通じて、個人としての自主性を伸ばすと同時に集団の一員として成長します。教師は草花を手入れする庭師のように成長をサポートする役割を担います。
ドーマンメソッド
ドーマンメソッドは、人間能力開発研究所の創設者であるグレン・ドーマン博士(1919年-2013年)が提唱した教育メソッドです。0歳から6歳の間に、五感を使った刺激を重視している点が特徴です。
人間の脳は、0歳から6歳までが最も成長し、脳の80%が作られると考えられています。その時期に、「視覚」「聴覚」「触覚」「味覚」「嗅覚」といった五感を通じて 外部から刺激を与えることで、脳の育成を促し、子供の可能性を伸ばせるという考えの教育法です。
赤ちゃんの頃から、白地に赤丸が描かれたドッツカードを見せる、文字や算数を学ばせる、水泳など運動を積極的にやらせるなど、ドーマンメソッドは、早期教育や英才教育などの理論的な基盤となっています。
石井式漢字教育
石井式漢字教育は、 大東文化学院(現・大東文化大学)卒業後、高校・中学・小学校の教諭を勤めた石井 勲博士 (1919年-2004年)が、小学校教諭時代に発表した教育メソッドです。「石井式漢字かな交じり絵本」を使う点が特徴です。
「石井式漢字かな交じり絵本」 は、リズム感のある美しい日本語で書かれているので、読み聞かせたり、遊び感覚で読んだり、本物の美術作品としてのクォリティの絵を見て、読解力や思考力を養うことができます。日本語を重視した教育手法です。
記憶力に優れている幼児期に、学ぶことの楽しさを教え、「思考力」「読解力」「表現力」を身につけさせることで、未来の社会で活躍できる子供たちを育てます。言葉は思考の土台という考えで、国語教育を行うことにより、すべての子ども達が本来持っている、天才的潜在能力を100パーセント引き出すことが目的です。
ヨコミネ式教育法
ヨコミネ式教育法は、鹿児島で社会福祉法人純真福祉会「こども園」を経営する横峯文吉 氏が編み出した教育メソッドです。実弟が横峯さくらの父ということでも有名です。「4つのスイッチ」を入れる教育が特徴です。
「4つのスイッチ」とは、「子供は競争したがる」「子供は真似したがる」「子供はちょっとだけ難しいことをやりたがる」「子供は認めたがる」です。大人が「教えて育てる」のではなく、このスイッチを入れてあげることにより、全員が平等に持っている才能を引き出してあげることが教育という考えです。
その結果、卒園までに園児全員が逆立ちで歩いたり、絶対音感を身に付けて楽器を弾けたり、5歳児で漢字が読めたりする姿がテレビで取り上げられて、一躍、全国で有名になりました。 「心の力」「体の力」、「学ぶ力」 の3つを育んで、子供たちが持つ可能性を引出します。
七田式教育
七田式教育は、幼児教育の研究者である七田 眞 氏(1929年-2009年)が提唱した教育メソッドです。七田 眞 氏は、世界平和功労騎士勲章を受章しています。右脳開発を中心としたトレーニングが特徴です。
人間が本来持っている才能を最大限引き出すためには、幼児期からの教育が重要と考え、オリジナルのフラッシュカードを使った右脳トレーニングなどで幼児の能力を引き出します。知識を与えるのではなく、子供に愛情を伝え、無限の可能性を引き出す「認めてほめて愛して育てる」教育です。
七田式教育は、知育だけでなく、運動、食学など総合的なアプローチをしています。また、英語教育にも力を入れています。七田式教育は言葉や文化の壁を越え、現在では世界19の国と地域で実践され、約100万人に学ばれています。
幼児教育メソッドの共通点
幼児教育メソッドを研究していくと、驚くほど共通点が多いことに気がつきます。その一例をあげてみます。
モンテッソーリ教育では、 「自己教育力」すなわち「自分で自分を育てて成長する力を重視します」と述べられています。 レッジョ・エミリア・アプローチでは、「子供の個性や意思を尊重して、子供が主体的に学ぶことを重視します」と述べられています。
ピラミッドメソッドでは、4つの土台の1番目が「子供の自主性」です。ニーチキン教育では、「『自分で考える』『自分で解決方法を見つける』ことができるように育てます」と述べられています。フレーベル教育では、「個人としての自主性を伸ばすと同時に集団の一員として成長します」と述べられています。
これらはすべて、「子供が自主的に学んで成長していく」ことの重要性について語られていることがわかります。
また、シュタイナー教育では、「 幼児期は、手足を動かして遊ばせることで身体を発育させることを重視します」と述べられています。ニーチキン教育で よく知られているのは、積み木などの知育玩具を使った遊びです。
フレーベル教育では、「 幼児の神性を伸ばして発達させるためには、遊びが重要 」と述べられています。これらはいずれも、「遊びの重要性」について語られています。
日本の教育メソッドに目を向けてみます。石井式漢字教育では「すべての子ども達が本来持っている、天才的潜在能力を100パーセント引き出すことが目的です」と述べられています。ヨコミネ式教育法では、「全員が平等に持っている才能を引き出してあげることが教育 」と述べられています。
七田式教育では、「人間が本来持っている才能を最大限引き出すためには、幼児期からの教育が重要 」と述べられています。これらはすべて「子供はすべて才能を持っている」ということが語られていることがわかります。
以上は、ほんの一例ですが、各メソッドをより深く研究していくと、本質の部分では、かなり共通していることが理解できます。
まとめ
今回の記事では、「幼児教育で大切なこと」 を5項目に絞って説明させていただきました。そして、それを裏付けるために、モンテッソーリなど幼児教育メソッドの個々の説明と、共通点について解説しました。
幼児教育メソッド個々の説明は、エッセンスだけなので、興味があるメソッドがありましたら、ぜひご自身で研究してみてください。なぜなら、教育で大切なことは、「自主的に学んで、成長していくこと」なのですから。
もうおわかりになったと思いますが、冒頭に述べた「幼児教育で大切なこと」は、評価の高い多くの幼児教育メソッドを研究して、それらの共通点を踏まえた上で、僕の子育て経験をプラスしてまとめたものです。ぜひ読者の皆様の子育てのご参考にしていただければ幸いです。
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